ジクレー版画技法って市販のインクジェットプリンタで出力するのと何が違うの?
 
例えばコットン製のHEAVYな水彩画用紙やキャンバス地での彩度の高い色彩(鮮やかな色)や微妙な階調の違いによる色調の変化の表現能力が市販のインクジェットプリンタとは比べ物にならないくらいに優れているということです。さらに原画の持つあらゆる色彩を忠実に再現できることも大きな違いです。これらは、美術品である絵画の版画を制作するために特別に開発された専用の入出力機器そして専用のインキ素材や出力素材、それらをトータルでコントロールしているカラーマジメントシステムとそれに加えて職人芸を要求される熟練オペレータがいればこそ初めて実現できることなのです。
 
 
本当に一枚だけの注文でも受け付けてくれるの?
 
もちろん本当です。ジクレー版画技法がこれだけ絵画市場で急激に支持されてきた理由のひとつが「オンデマンド」だからです。どなたでも「必要な作品だけを、必要な時に、必要な枚数だけ」注文ができます。
 
 
リミテッドエディションって何?
 
作家が原画を描き作家監修のもとで完成する版画で、限定枚数で刷られた後は原版は破棄されるか厳重に保管され二度と再販されることはありません。また作家が一枚一枚入念にチェックし納得した仕上がりのもののみに直筆のサインをし、エディションナンバーが記載されます。かのパブロピカソは「版画は小切手と同じだ。サインされて初めて価値が生じ、流通するようになる」と言っています。因みにピカソのリミテッドエディションは50部、シャガールやミロで75部だそうです。
 
 
個人的に「版画を出版する」って初めての人には大変なように思うけど?
 
確かに従来の版画技法では版画制作のための初期投資がかなりな金額になりますし、刷り部数も最初から100部、200部と引き取らなければならないというようなことで下手をすると在庫を作って大きな損失をだす危険性がありました。ですから、作家が個人的に版画を出版するなんてとてもとても危険が大きすぎ出来なかった、というのが現状でした。しかしながら、ジクレー版画技法の出現によってこれらのリスク要因が大幅に軽減されたのです。ジクレー版画では初期投資は作品1点当たり数万円で済みます。刷り部数も一枚からOKです。しかも版画そのものの品質は従来の版画技法に決して劣るものではありません。それどころか、原画の持つあらゆる色彩を原画に忠実に再現且つ微妙な階調表現を正確に再現する点では従来の版画技法をはるかに凌駕しています。
 
 
クワッドブラック出力システムって聞きなれない名称だけど?
 
濃度の異なる4種類の顔料ブラックインキを持つモノクロ専用出力機のことです。従来、イメージの明るい部分で見られたぶつぶつもなく非常にスムーズな階調表現が可能になっていて従来の銀塩写真を凌駕する広いダイナミックレンジを実現しています。また、色調もプラチナプリントを思わせるようなテイストが特徴です。もちろん、出力素材も水彩画用紙、キャンバス地そして和紙とカラー同様対応が出来ます。書画や写真のモノクロポートレート版画に最適です。
 
 
カラーマネジメントって何のこと?
 
デジタルカメラ、スキャナ、モニタそしてカラープリンタなどの入出力機器ではそれぞれが表現できる色彩の範囲が異なります。そのため同じイメージデータなのにあるモニタで見た色、あるプリンタで出力した色と別のモニタ、別のプリンタで出力した色が異なっていたり、さらにはモニタとプリンタの色が異なるというようなことが起こります。そこで、各入出力機器の色彩表現領域を管理し、どの機器で入出力しても同じ色彩に見えるようにトータル的に色管理するシステムのことです。
 
 
ICCプロファイルって?
 
カラーマネジメントをきちんと実施する上で必要不可欠なもので、ICC(国際カラーコンソーシアムの略)がデータ書式を定義したプロファイルのことです。入出力機器の色彩表現領域などの特性を記述したファイルで、色特性は共通化した色の物差しであるCIE(国際照明委員会の略)で定められたLab表色系などが用いられています。扱う画像の色彩をICCプロファイルに基づいて入出力時に補正することでカラー特性を統一することが出来ます。
 
 
ガモット(Gamut)って何のこと?
 
色彩表現領域のことです。特定の入出力機器、モニタやプリンタが表現可能な色彩領域のことをいいます。人間の目で確認できる色彩範囲よりもモニタの色彩表現領域は狭く、通常のプリンタの色彩表現領域はさらに狭くなっています。例えば、ある入力機器の色彩表現領域内にある色彩の位置が別の出力機器の色彩表現領域に直接変換できない場合この色彩は「ガモット外」であるとされます。
 
 
プラチナプリントって現行の写真と何が違うの?
 
現行のシルバープリントの「銀」に代わって「プラチナ(白金)」だけで画像を形成しているプリントで、プラチナプリント特有の奥行きのある柔らかいトーンや深い味わいのある色調、さらには適切な処理をすれば数世紀の寿命が期待できることから、究極のプリントとも言われています。通常、感光液は手塗りで水彩画用紙のようなテキスチャーのある紙に塗布され、紙の繊維に感光液が吸収され平滑な表面を形成します。感光液が乾いたら、直接水彩画用紙の上にネガを置きコンタクトプリントして現像します。まさに「手作りの写真」ですね。